寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2008年7月-8月号

「国際収支の天井」への新たな視界

2007年の日本の貿易構造を見ると、鉱物性燃料を20.3兆円、食糧を6.0兆円輸入していることがわかる。つまり、エネルギーと食べものを海外から26.3兆円も買って生活しているということである。そのためにも外貨を稼がざるを得ず、輸出の上位3品目、自動車を17.7兆円、半導体等電子部品を5.2兆円、鉄鋼を4.0兆円輸出することで合計26.9兆円の実績をあげ、エネルギーと食に充当しているという構図が描ける。

仮に、エネルギー、食糧の価格高騰が進行し、価格が倍になったとして、2007年の輸入量を確保しようとすれば、52.6兆円の輸入代金を投入せざるを得ないことになる。ということは、2007年の日本の輸出の上位10品目(上記3品目に加えて、自動車部品、原動機、有機化学品、プラスチック、科学・光学機器、電気回路等機器、電算機部品)で稼いだ外貨を全部投入しても46.8兆円にしかならず、2007年の輸出総額83.9兆円の3分の2をもってエネルギーと食糧を買わねばならないことになる。

戦後しばらくの間、日本の経済白書には「国際収支の天井」という言葉が存在した。「売るものがないから買いたいものも買えない」ということで、輸出産業が育っていないから輸入も思うようにできないことを意味していた。再び、この「国際収支の天井」という言葉を想起させられる事態となりつつある。

「エネルギーと食糧は海外から買うほうが効率的だ」という時代は終わりつつある。エネルギーと食糧を耕作する文明への転換が求められるということである。再生可能エネルギーの開発、食糧自給率向上は明確に時代のテーマとなりつつある。例えば、現在39%といわれる食糧自給率を5割レベルにまで上げるための農業生産法人(2007年に9,460にまで増大)の充実など課題は見えてきている。