連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2006年7–8月号
産業力を高めるということ
「失われた10年」とも言われ、バブル崩壊から迷走を続けてきた日本経済もようやく実質2%台の成長軌道を回復したかに見える。「銀行の不良債権の償却が一巡したから日本経済も再浮上した」という説明をする人もいるが、それは断片的要素にすぎない。基本的には、日本の産業セクターの努力が日本経済を蘇らせたのである。
バブルのピークとされた1990年からの15年間で、日本は輸出を20兆円増やし、輸入を15兆円増やした。つまり、貿易黒字を年間5兆円増やすことで、為替を1990年の1ドル145円から2割も円高にシフトさせ、円の購買力を高め、エネルギー価格高騰のリスクを吸収しながら安定成長軌道を回復したのである。これを支えたのは製造業を中核とする産業セクターの努力以外のなにものでもない。
日本の輸出の第一位を支え続ける自動車産業にしても、絶えざる努力でその中身が高度化していることに気付かざるを得ない。例えば、昨年の米国向け自動車輸出は166万台と、現地生産車338万台の半分になっているのだが、レクサス級の最高級車種やプリウスのような環境対応車種を投入し、付加価値の高い輸出構造へと転換させて外貨を稼いでいるのである。産業力を高める地道な努力なくして国の経済が輝くことはない。
このところ、我々は「金融」の議論に眼を奪われすぎてきた。マネーゲームの旗振り役をもてはやし、半知半解でのM&Aゲームに浮かれてきた。だが、経済とはそんな軽薄なものではない。産業の現場を支える者としてこのことの重要性を強く認識しておきたい。
ところで、昨年の日本の輸入統計の上位品目にちょっとした異変が起こった。第一位は依然として「原油」なのだが、第二位に「衣服・同付属品」が浮上してきた。つまり、いかに日本人が海外からブランド物を含めてファッション衣料品を買うようになっているかを反映している。原料を輸入して製品を売るという貿易パターンから大きな変化が進行しているのだ。

