寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2005年9月号

異様な石油価格高騰と原材料資材価格の上昇

一次エネルギーの外部依存の高さを弱点とする日本経済の進路を考えるうえで、最も重要な指標の一つがエネルギー価格の動向であることは論をまたない。とりわけ、実際に日本の水際にエネルギーがたどり着いている価格である「原油入着価格」の動向が重要である。

その原油入着価格の7月の数字が発表になり、バーレル52.59ドル、円ドルレートで換算してバーレル5,887円で原油を調達したという結果になった。バブル経済のピークと言われた1990年の原油入着価格はバーレル23.4ドル(円建て3,459円)、1995年にはバーレル18.0ドル(同1,694円)、2000年にはバーレル28.46ドル(同3,067円)と推移してきたが、5,887円という水準は過去15年の推移の中でも尋常ならざる構造変化を示している。

投機的要素と指摘されながらも、石油先物市場ではWTIが一時バーレル70ドルを超すという事態となっており、やがてこのインパクトが日本への原油入着価格をバーレル6,000円台に押し上げるならば、需給不安はなくとも価格高騰が日本経済に深刻な影響を与えると思われる。原油価格高騰は一次産品価格と連動し、既に原材料価格を急騰させている。6月段階での「企業物価指数」は、2000年を100として、素材原料141.8、中間財102.4、最終財91.1と、原料高の製品安(川上インフレ、川下デフレ)という傾向を顕著にしており、価格体系のゆがみが進行している。

2005年3月期の日本企業の決算において、1,000億円以上の利益をあげた企業が61あるが、うち、かつて有望産業ともてはやされたハイテク関連(高付加価値・先端技術分野)の企業は15社にすぎず、素材資源関連が12社、商社・海運7社、海運・公益12社の躍進が目立つ。これも川上インフレ、川下デフレを反映した業績だと言える。瞬間風速とも言える展開だが、川下優位と言われていた時代と様相が異なり、「川上による川下の再編」さえ進行しているのである。この構造変化を視界に入れることが、これから数年の経営の鍵となる。