連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2005年6月号
欧州と中国の関係
パリから北京に入るという体験をした。飛行時間9.5時間、モスクワのかなり北まで北上してから北京に向かったので飛行距離は8,200kmだった。以前にフランクフルトから北京に飛んだことがあったが、8.5時間で、欧州と中国の間の距離は意外なほど近い。この距離感は欧州と中国の経済・外交関係での距離感を象徴するものでもある。
中国にとってEUとの貿易は、米国や日本との貿易を上回り、投資や技術の導入、武器輸入、さらにはGPSなどの共同プロジェクトへの参画など、中国と欧州関係の密度には注目すべきである。北京へ向かうエアフランスの機内も、欧州からのビジネスマンと中国人観光客で満席であった。
2004年の中国の海外渡航者は2,885万人となった。日本の海外渡航者は1,683万人であったからいかに中国人が海外に向っているかに驚かされる。ただし、約1,200万人は香港への渡航者と推定されるので、実勢としては日中の海外渡航者が肩を並べたと考えてよかろう。さらに、台湾、香港、シンガポールなど大中華圏の人たちの欧米での活動も加わり、やたらに中国系の人々の存在感が目立つというのが昨今の状況である。中華圏を中核にした「アジア大移動時代」が現実のものとなっている。
4月の中国での「反日デモ」とその後の収束の過程で、実は欧州の目線が中国政府を動かしたという要素を見逃せない。欧州メディアが「閉鎖的ナショナリズムを政策の正当化に利用しようとする中国政府の問題」をたしなめ、国際社会での成熟した役割を促す暗黙の圧力をかけたことが、中国政府を冷静にさせたのである。中国も国際的孤立を恐れており、欧州はその姿を映し出すプラットフォームでもあるのだ。
WTOに加盟した中国であるが、環境問題や知的所有権の問題などにおいて、国際社会のルールに積極的に関与する国に成熟してくれなければ困る。日本と中国の二国間で向き合う心理を超えて、より広い国際社会の中で二国間関係を調整していくという視点が大切になるであろう。

