寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2004年11月号

ブッシュ再選とアメリカの現実

アメリカを訪れる日本人の9割以上が目撃するアメリカは、ハワイ、ロスアンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンであり、今回の大統領選挙においてケリー候補が勝利した地域である。沿海部アメリカの狭間に広がる内陸部アメリカ、ここがブッシュ再選を支えた地域である。

アメリカ人のうちパスポートを保有する人は14%という統計がある。ちなみに「島国根性」といわれる日本でさえパスポート保有者は27%である。つまり、大部分のアメリカ人は海外を訪れることを想定しない生活の中に生きているということであり、「内向するアメリカ」というDNAを育む土壌となっている。内陸に住むアメリカ人には一段とその傾向が強く、そこに「世界がアメリカをどう思おうが、とやかく言われたくない」という心理が根強く存在し、それが「アメリカが正しいと信ずることをやって何が悪い」という判断につながり、ブッシュ再選を支える力になったことは間違いない。

ある意味では「健全なアメリカ」ともいえる地域で、7,400万人といわれる宗教心の篤い福音派プロテスタントなどが層厚く存在する地域でもある。宗教性は今回の選挙の隠された要素であり、宗教的情熱の熱い人にとって、イラクでの戦いは「邪悪なものへの正義の戦い」であり、「妊娠中絶や同性愛の否定は道徳心の証」と受け止められ、ブッシュ支持基盤を構築することとなった。

ブッシュ再選はアメリカ人自身の選択であり、責任はアメリカ人が担っていかねばならない。イラク戦争の泥沼化による米兵士の死者の増加(すでに1,100人超)や戦費負担の重圧(すでに累積2,000億ドル超)、さらには財政赤字の深刻化と経常収支の悪化(双子の赤字の1兆ドル超)を思えば、米国の進路は多難と言わざるを得ない。疲弊して覚醒するのか、自覚して転進するのか、いずれにせよアメリカの国際社会との協調が求められる局面に至るであろう。ブッシュ政権の2期目を注視したい。