連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2004年9月号
悲惨指数
米大統領選挙の度に話題となる指数がある。悲惨指数(Misery Index)である。失業率とインフレ率(消費者物価上昇率)の絶対値を足し合わせた指数で、この指数が10.0を超すと、「現政権の経済政策は間違っている」という国民の批判が顕著になり、現政権の継続が困難になるとされてきた。確かに、父ブッシュが湾岸戦争直後に8割の支持率を誇っていたにもかかわらず、クリントンに敗れ去った1992年の選挙の時、悲惨指数は12台となっていた。
今回の大統領選挙において、「経済は争点にならない」とみられてきた理由はこの悲惨指数の低さにあった。ブッシュ政権は父ブッシュ敗戦の教訓を受けとめて、減税前倒しまでして景気浮揚に努め、3月までの悲惨指数は7.4にとどまっていた。しかし、その後ガソリン価格の高騰によって消費者物価が上がり始め、6月には同指数は8.9にまで跳ね上がった。7月は、ガソリン価格抑制対策によって8.5にまで下がったものの、11月に向けて急速に要注目点となってきた。
ところで、日本の悲惨指数はというと、6月の失業率4.6%、消費者物価の上昇率0.0%であるから4.6となり、現政権の経済政策に国民の批判が高まらないのもなんとなく納得できる。しかし、よく踏み込んで考えると「デフレ経済へのソフトランディング」ともいうべき縮小均衡型のあきらめの社会心理が蔓延していることがみえる。失業率が低いというが、リストラにあった人達が、低い雇用条件で働いているともいえる。「年収200万円以下で生活する人」としてフリーター400万人、失業者350万人、生活保護者130万人、パート・アルバイトなど非正規雇用者1,750万人といわれる。統計上の悲惨指数は低いが、社会の中身は悲惨度を増していると言わざるを得ない。

