寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2004年5月号

欧州の新潮流の注目点

「欧州情勢は複雑怪奇」という言葉を残して内閣が倒れたこともあった。日本は欧州が見えなくなると迷走するとも言える。その意味でも、5月1日に25カ国体制に拡大したEUの動きは注目すべきである。

本誌「THE WORLD COMPASS」では先月号で欧州特集を組んだが、あらためてEU拡大によって注目すべき点を列記しておく。

(1)今回の中欧ポーランド・チェコ・ハンガリー等の欧州回帰によって、欧州とロシアは直接国境を接するようになった。つまり、冷戦期の東西を分断した「鉄のカーテン」が消滅したわけで、冷戦終焉の最終局面を迎えたということである。

(2)米国が西欧に影響力を行使し得た時代が終わり、欧州の米国からの積極的自立、すなわち「欧州の欧州化」が進行する時代を迎えた。米国はNATOという軍事機構の拡大維持を通じて欧州への影響力保持を狙うが、安全保障から産業政策まで米欧関係の微妙な力学変化が注目される。

(3)欧州統合の隠されたアジェンダは「ドイツの強大化」であり、現実にロシアから旧東欧まで積極進出しているのはドイツ企業である。ドイツの力を欧州という共通の家に収めることによって制御するという思惑が広く欧州に潜在しており、ドイツにも次なる発展のプラットフォームを確保して実利をとるという判断がある。

(4)日本人は英国という情報回路を通じて欧州を認識する傾向があるが、大陸側欧州の動向を直接とらえる視点が重要となる。米国との触媒としての英国の欧州における役割は今後も重要であるが、相対化してとらえる必要がある。

(5)国境を越えた地域連携が常態化しつつあり、従来の国境線を前提とする欧州認識を改める必要あり。とくに、北欧、バルト3国、北ドイツなどによる「バルト海都市連合」や北イタリア、南フランス、スペイン・バルセロナ地域、ギリシャなどによる「地中海アーチ」など新基軸の動向に注目したい。