連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2004年2月号
円高の戦略的活用
輸出に依存する日本経済にとっては「円安」が望ましい、とする意見がなんとなく通用している。驚くべきことに、昨年、2003年通期で、日本は累積20兆円の資金でドルを買い支えた。今年になって、1月だけで7兆円の為替介入を行い、これは史上空前の額だという。外国為替資金特別会計を通じて国内機関投資家からの借り入れを行い、円安誘導のためにドルを買い、大部分は米国債として保有していることになる。
前年比1ドルにつき10円も円高に動いたことにより、昨年だけで1.85兆円も為替差損を生じ、為替評価損は総計7.8兆円にも達したという。当然、為替の安定は重要な要素であるが、ただひたすらに円安誘導のために国富を投入するというのはいかがなものか。皮肉な見方をすれば、日本の円安誘導のための資金が米国に流れ込み、双子の赤字に苦しむ米国を支え、米国の過剰消費と過剰軍事力をもたらすカンフル剤になっているのである。
為替レートとは、基本的には国の経済力を反映する指標である。日本が円という通貨単位を採用したのは1871年(明治4年)であり、1ドルが1円であった。その後、太平洋戦争直前の1940年(昭和15年)は1ドル2円であった。敗戦後、1949年に1ドル360円とされたわけだが、日本の敗戦とは円の価値が180分の1になったということであった。それから半世紀を経て、日本は1ドル105円前後にまで円高にもってきたわけで、それは日本経済の評価を高め、通貨の購買力を強めてきたということである。
今、我々に求められるのは「円高の戦略的活用」であろう。国も企業も、ただ円安を願望するだけでなく、円高を利して、なすべき布石を打つことを真剣に検討すべきである。真に恐れるべきは通貨の価値が国際的に評価されなくなることであり、極端な円安である。発想を転じて「円高」による購買力を活用することを志向するならば、さまざまな構想が成立することに気付くはずである。

