連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2003年10月号
ウクライナへの戦略的視点
総合商社が産業界で期待される役割として、「地政学的な知」とでもいうべきグローバル戦略のリーダーという役割がある。地球全体を睨み、どこで、どのようなビジネスモデルを推進するのがよいのか、的確な戦略を提示する能力が期待される従って、我々は、いかなる企業よりも、世界潮流を見抜き、新しい舵取りを示唆できる能力を磨かねばならない。
9月末、ウクライナを訪れた。経団連のウクライナ研究会の委員長としての初の訪問であったが、強く「地政学的な知」の問題意識を刺激された。この国を以下の視点から注目することで、新しい視界を開かれた。
(1)ロシアがプーチン政権下で5%成長軌道を続け、「大ロシア主義」への回帰を見せるなかで、ウクライナの独立維持と経済的成功は「西側」にとって重大である。EUへの参加を志向するウクライナを安定・発展させることは、ユーラシア大陸の地政学からも配慮すべきテーマである。
(2)ウクライナは、ソ連邦時代から、ロシア圏産業基盤の集積地であり、鉄鋼・造船をはじめとする工業生産の潜在力が存在する。また、キエフ工科大学など科学技術分野での蓄積も厚く、研究開発での連携のインフラが存在する。
(3)ウクライナ経済の弱点は、「エネルギーの外部依存」の高さで、ロシアに石油ガス供給の8割を依存する。また、チェルノブイリでの被爆体験などの歴史も有す。それ故に、エネルギー分野(原子力安全技術、省エネ・新エネ技術、再生可能エネルギー関連技術)での日本との連携可能性が大きい。
(4)拡大EUへの戦略的取り組みの延長上に、ウクライナを一つの戦略視点に置いた事業・プロジェクト企画が検討されるべきであろう。

