寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2003年6月号

日本の「富の分配構造の変質」

極端な資産デフレの進行によって、「資産家」といわれた人達が受けた打撃は大きい。この10年間で商業地は6割、住宅地は3割、土地の値段は下がった。株はもっと深刻で、日経平均は65%下落した。資産家にとっては涙も枯れ果てるような10年だったのである。

10年ほど前まで、「1億円の金融資産があれば左うちわ」という話が存在した。つまり、1億円が産み出す運用益(利息)が年に500万円は期待できる時代だったということである。ところが、現在、500万円の利息をリスクのない運用(定期預金や貯蓄預金)で得ようとすれば、50億円の金融資産が必要となった。つまり、この10年で、500万円のフローの収入を得られる人と、50億円の金融ストックを有する人が対等になったということである。

このことは、一定のフローの収入が安定的に確保されている立場の人間、すなわちサラリーマンの所得分配上の地位を相対浮上させた。この4年でサラリーマンの年収も約6%下落したのだが、資産家に比べて「逼迫した窮乏感」がないのは、資産デフレと物価の下落によって、お金の使い勝手がよくなり、相対的には恵まれた立場を享受できたからである。

ストックからフロー優位へ。富の分配構造を転換させた日本が向かうのはどこか。新しいビジネスモデルを創造するにも、この点についての戦略的考察が必要である。