連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2003年4月号
環境変動不適応症候群
時代環境の激変に直面すると、人間の思考回路は情報負荷に耐えられなくなり、環境変動不適応症候群に襲われる。典型的な症状がいくつかある。例えば、一切の新しい情報に目を向けることを拒否し、自分の世界に閉じこもるという症状も一つである。「しょせん、世の中には目新しいことなど何もないのだ」と自分に言い聞かせながら、ひたすら、現実逃避に生きようとする傾向である。
また、手に負えないような困難な課題とか局面に立つと、筋道立てて物事を考えることをやめ、「仕方がない」「やむを得ない」という選択だけを積み上げることに陥るという症状もある。思考停止の中での行動選択は、かならず意図せざる悲劇的結末をもたらすものである。やれやれ疲れたなと思う時、思い出す高村光太郎の詩がある。
「火星が出てゐる。要するにどうすればいいか、といふ問は、折角たどつた思索の道を初にかへす。要するにどうでもいいのか。否、否、無限大に否。待つがいい、さうして第一の力を以て、そんな問に急ぐお前の弱さを滅ぼすがいい。予約された結果を思ふのは卑しい。正しい原因に生きる事、それのみが浄きよい。お前の心を更にゆすぶり返す為には、もう一度頭を高くあげて、この寝静まつた暗い駒込台の真上に光る あの大きな、まつかな星を見るがいい。火星が出てゐる。……」

