寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2003年2月号

経済現場に生きる人間の感受性

雇用統計を見ると、「失業率5.4%」の時代となっている。10年前は2.1%だったから3.3%ポイント失業率が増えたことになる。しかし、失業者数という実数でみると、この間に230万人も失業者が増え、失業者370万人に至ったということである。

わずか0.1%ポイントの失業率の増加でも7,000人の失業者増を意味する。数字に埋没すると人間は感受性を失う。7,000人もの人が「働く場」を失い、仕事を探さねばならない事態への痛みを失うことは、経済を論ずる人間としての資格を失うことである。
「デフレ・スパイラル」のなかで、「仕方がない症候群」が目立つ。あきらめのなかで問題に立ち向かう感受性を失う傾向である。こういう時代においてこそ、新しい事業構想を立ち上げ、成長のプラットフォームを創造する努力が大切になる。

全国どこに行っても「産業の空洞化」がささやかれ、金融不安のなかで中小企業の経営基盤の動揺が見られる。今こそ、総合商社の出番である。高度成長期には、総合商社の「企業間信用」創出は産業金融の不足を補うものであったが、低成長もしくはデフレ期において、産業活性化に向けての商社機能が問われている。

単なる金融機能だけでなく、人材や経営戦略を提供できる総合力において、多くの企業と連携し、「事業を創り、仕事を創る」機能が求められている。先人の足跡をたどり、痛感するのは、「仕事を創る」ことへのやむにやまれぬ情熱である。