寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2002年10月号

アジアへの視点

「アジア」の語源は、トルコの地名「アッソス」に由来するといわれる。トルコの半島を小アジア半島(アナトリア)というが、この半島の先端の町アッソスをギリシャ側から見て、その背後に横たわるペルシャ、インド、中国など底知れぬ地域の総体を「アジア」と呼ぶ見方が定着したのであろう。つまり、西欧からの対置概念として「アジア」は生まれたのである。

ワールドカップ・サッカーの地域予選で、サウジアラビアやイランと同じブロックで戦うことに違和感を覚える日本人も少なくないであろうが、欧州側から見たアジアとはそういうものなのである。岡倉天心は、1903年にロンドンで出版した「東洋の理想」において「アジアは一つである」と言った。無論、アジアは多様であり、とても一つとはいえぬが、西洋化の潮流のなかで、必死にアイデンティティーを模索し、アジアの自尊と自覚を求めた心情は理解できる。

21世紀初頭のいま、「停滞するアジア」「退嬰のアジア」というイメージは次第に払拭され、アジアの活力が強く印象づけられはじめている。中国・インドの経済的台頭、ASEANの結束と成長軌道の回復、北東アジアの安定化など確実にアジアは変わりはじめている。「アジアの奇跡」が語られた90年代よりも、安定的・持続的な成長基盤が形成されはじめており、これからの10年、南西アジアから北東アジアまで、実質年率3%以上の成長が予想される。「アジアは一つ」ではないが、協調と結束の共通のプラットフォームが形成されてくることが期待できる。

当然のことながら、成長軌道のなかで、エネルギーや食糧の需給安定化の問題や新産業の創生など、産業面での課題も浮上してくる。広域アジアを視界に入れて、いかなるビジネスモデルを構築するのか、それは心躍るテーマである。