連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2002年6月号
情報のプロ
インテリジェンス、すなわち問題解決型の情報活動を通じ、情報のプロといわれる人と付き合って痛感するのは、「時間と金に厳しい」ということである。つまり、プロとしての実力を評価される人ほど、自分の時間管理と活動のコスト・パフォーマンスに厳格だということである。
ある日本のシンクタンクが、紹介状を持ってH・キッシンジャーのインタビューをした。1時間のインタビューで、初めの15分と終わりの15分は冗談を言っていたから正味30分程度の内容だった。後日、キッシンジャー事務所から1万ドルの請求書が来て仰天したという。知的緊張を積み上げて、情報分析を行ってきたプロとして、当然の要求という文脈だったという。
日本の大企業サラリーマンや巨大メディアに働くジャーナリストは、所属組織の名前を出せば、だれでも面談してくれるという状況に慣れていて、情報活動の厳しさを知らない。もし、金をかけずに重要な情報にアクセスするのであれば、一流の情報源が面談に値すると判断してくれるような準備と実績をこちらが整えるしかない。知識と問題意識の収斂なく、漫然と相手の意見を聞いても、得られるものは限られている。
よく「自分には人脈がある」ということを誇る軽薄な情報マンに出会う。人脈とは、相手を知っているという次元のものではなく、相手が自分の意見に耳を傾けてくれ、影響力を行使できる関係になっているということである。
つまるところ、「情報のプロ」とは、フットワーク軽く走り回ることではなく、自らの側に発信するに値するメッセージを蓄積した存在を意味する。

