寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2002年5月号

総合商社における研究開発力とは何か

このところメーカー企業で技術開発に携わる人たちや大学の技術研究者と面談する機会が多い。優れた専門性と自らの分野を極める誠実さに心打たれることが多い。商社においても、新しいビジネスモデルの創造を意図するならば、今日のような技術革新のスピードの速い時代においては、高度の先端的技術知識やエンジニアリング力が不可欠である。

しかしながら、現実に商社においては、実験室一つあるわけではなく、専門技術者を層厚く布陣することも容易ではなく、徒手空拳で新事業分野に挑戦することになりかねない。商社としての研究開発とは何なのか。自問自答するなかで見えてくることがある。それは「トランジスタの技術を開発することと、トランジスタ・ラジオを枕もとに持ち込むことは違う」という考えである。すなわち、技術をビジネスモデル化するときに、「ニーズの探査機能」「ビジネス化支援機能」において、商社ならではの力を発揮できる面は小さくない。

メーカー企業の技術開発者や大学の研究者と話をして実感するのは「相互補完性」ということである。われわれには技術そのものを極める力はないが、技術の可能性をビジネスモデルにする分野で貢献できる。しかも、日本の国内だけでなく、例えば、米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)やメリーランド大学、さらには中国の清華大学との連携を日本のメーカー企業と一緒に進めるなどのグローバルな企画を実現できる潜在ネットワークを有している。

そうした実績の蓄積の中から、新たな期待が生まれ、機能が深まるのだと思う。心を込めて「研究開発力」に挑戦したい。