寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2002年4月号

エネルギー戦略考

ブッシュ政権の新エネルギー政策において「原子力」の復権の動きが顕著である。スリーマイルの原発事故から30年もの間、米国は一基の原発も建設しなかった。最先端の原子力技術の保持、現実には原子力技術者の持続的育成が懸念された。ところが、再び原子力が注目され、50万キロワット級の中型原子炉50基が計画される事態になって、あらためて驚かされた。

米国は、軍事という分野で、原子力技術を温存してきていたのである。米国は、10万トン級の原子力空母を9艦保有、このクラスの空母は30万キロワットの原子炉を2基搭載している。また、6,000トン級の原子力潜水艦61艦を保有、これも5万キロワットの加水型原子炉を搭載している。しかも、それらは、冷戦後の戦争の性格の変化(テロ、ゲリラをも想定した非対照型の戦争)を受けて、技術的にも修正、高度化がなされており、原子力関連技術は見事に保持されてきたことになる。

日本においても、原子力は相次ぐ不祥事や事故を経て、国民の理解を失い、住民運動の反発もあって、新たな立地は困難な情勢にある。大学の「原子力工学部」も、かつての花形の存在感を失い、専攻希望の学生も急減していると聞く。

実は、日本こそ原子力の平和利用技術をしっかりと保持すべきなのである。近隣諸国が、確実に原発を建設していく状況のなかで、非核平和主義を貫き、原子力の安全性を確保するためにも、先端的原子力技術の確保に努力しなければならない。

エネルギー戦略は、意思の問題である。日本にとって「エネルギーの外部依存の高さ」は、この国の虚弱性の決定的な要素である。だからこそ、持続する強い意思を持ったエネルギー戦略が求められるのである。