寺島実郎の発言

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連載「INSIGHT」THE WORLD COMPASS 2002年3月号

大人が幸福な社会

2006年、つまり4年後に日本の人口は頂点を迎え、長期的にみると毎年60万人ずつ減少しはじめる。同時に、人口に占める65歳以上の人口比率は急増し、2025年には29%になると予測される。つまり、急速な高齢化が進行するということだ。

具体的イメージを描くと重大さが見えてくる。一人の子供が成人するまで、子供にかかわる直系親族の大人の数は、両親とその親を合計して平均4人というのが一昔前であったが、やがて曽祖父母を含め8人に迫るということである。少子化で玩具が売れなくなるというのは間違いで、玩具は子供にまつわりつく大人の数に比例して売れる。「毎日が誕生日」となって、次々と大人が買い与えるからである。甘やかされた子供がこの国の将来を担うことは間違いない。

長い海外での生活から帰って、日本の状況に違和感を覚えたのは、繁華街に子供と若者があふれていることであり、TV文化において、子供のタレントがはしゃぎ回っていることである。大人たちはといえば、何やら不安そうで、不愉快そうで、暗く生気がない。子供にとって大人社会が面白くなさそうであり、「目指したいと思う大人」が存在しないから、大人社会を尊敬する気持ちが全くない。

いま、この国の大人がなすべきことは、過剰に子供にかまうことではなく、まずは筋道の通った大人社会を創ることであり、大人が幸福な社会を実現することである。 (2002年2月27日付、朝日新聞「eメール時評」欄より転載)