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レポート

2006年の世界政治・経済

国際情報部
2005年12月27日掲載

III. 各地域政治・経済の現状と課題
8.中南米
ファンダメンタルズの改善が続く経済

世界経済の順調な拡大、穀物、鉱物資源をはじめとする一次産品価格の高騰、世界的な低金利水準の継続という、域内経済にとって好適な外部環境の恩恵を享受する形で、2005年の中南米経済は堅調に推移した。各国とも輸出が伸び、インフレも沈静化している。ブラジルとペルーでは、輸出額が史上最高水準に達し、貿易・経常収支は前年を上回る黒字を見込んでいる。他方、アルゼンチンやコロンビアなどでは、国内経済の回復に伴い輸入も急増し、貿易収支がやや悪化している。

輸出の好調に伴い、各国の通貨も先進国通貨に対し高めに推移し、国内経済の回復基調も鮮明になった。一部では雇用の改善による個人消費に力強さも見え始めている。各国当局の財政規律も効を奏し、財政収支の黒字維持や債務の規模縮小といった改善傾向が継続している。これを受け、株式市場が好転したほか、債券市場におけるリスクプレミアムの低下も見られた(下図)。

中南米ソブリン・スプレッド(EMBI)の推移

06年の中南米経済は、一次産品価格の高値安定などから、堅調な成長が見込まれる。主要国の大統領選という政治の季節を迎え、汚職や政争激化や財政面での規律低下などによる経済への影響の大小が注目されるが、各国は外部環境の変化に備え、債務の前倒し返済や低金利債務への借り換えを進め、06年の返済資金も調達済みであり、リスクは縮小してきている。このため、中南米経済全体のファンダメンタルズの改善とあわせ、経済危機に陥る可能性は低いと考えられる。

中道左派の台頭が顕著に

05年には、ウルグアイで同国初の左派政権が発足し、バスケス新大統領が就任した。これにより、中南米の左派および中道左派政権は計5カ国(チリ・ラゴス大統領、アルゼンチン・キルチネル大統領、ブラジル・ルーラ大統領、ベネズエラ・チャベス大統領)となり、中道左派の台頭が一段と顕著になった。

80年代後半以降進展した新自由主義的な改革が中南米経済全体の安定化を一旦はもたらしたものの、政治面の腐敗はやまず、所得格差が拡大した上、治安も悪化した。このため、国民一般が改革に失望し、ここ最近、左派系を中心とする新たな指導者の登場が相次いだ。しかしながら、所得分配の公平化などポピュリズム的な政策を掲げたこれら新指導者も、財政的な裏付け不足や脆弱な支持基盤から、国民の強い期待に十分にこたえきれてはいない。

また、06年から07年にかけて大統領選が相次いで予定されていることもあって、05年の中南米は、その前哨戦という意味合いも含み、政治的な揺れが続いた(下表)。ブラジルでは05年上半期、与党から野党まで汚職スキャンダルが広がった。このケースでは経済的な悪影響は小さかったが、中南米各国とも大統領選を控え、統治能力の低下や改革が遅延する可能性も想定できる。選挙という政治イベントが域内を大きく揺り動かす可能性は依然否定できない。

中南米が迎える次期大統領選
米国とはやや距離も

中南米では米国とやや距離を置く傾向がうかがえる。05年前半、米国との間で協議されてきたFTAA(米州自由貿易地域)協議が決裂、FTAA協議は失敗と指弾する議論や、メルコスールとアンデス同盟で南米経済同盟という新たな統合を模索する動きも浮上している。05年11月、南米首脳会議に参加したブッシュ米大統領のアルゼンチン入りに際しては、1万人規模の反米デモが発生した。ベネズエラは反米的な姿勢を強め、ワシントンコンセンサスに対抗してアルゼンチン国債約5億ドルを購入、同国からタンカー購入契約を締結するなど、石油収入を見合いとした支援を進めている。ベネズエラはメルコスールに独自に参加する方針も表明している。

そうしたなかで、ブラジル、ベネズエラは、中国との経済関係を重視する方針を継続しているが、中国はその両国との関係強化に加え、ペルーの鉄鉱鉱山やアルゼンチンの石油関連会社に投資するなど、中南米における存在感を一段と増してきている。