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レポート

2006年の世界政治・経済

国際情報部
2005年12月27日掲載

III. 各地域政治・経済の現状と課題
7.ロシア・CIS
ロシア経済は減速しながらも、好調を持続

ロシア経済は、エネルギー価格の上昇を背景に拡大トレンドを維持しているが、そのスピードは2005年には減速した(下表)。上半期のGDP成長率は前年同期比5.7%、鉱工業生産4.0%、固定資本投資9.4%といずれも減速。原因は、経済の要である石油セクターへの重課税、原油輸送能力の限界、投資意欲減退等であり、特に石油企業への課税強化により生産意欲が削がれ、設備投資が停滞、新規油田開発が進まず、将来、石油生産量が頭打ちになる懸念が生じている。

ロシアの主要経済指数(2002-2005年)

一方で、個人消費は堅調であり、05年上半期の商品小売販売高は11.3%の伸びで4年連続の拡大を見込む。産業部門別に見ても商業、サービス、不動産業などが好調で、モスクワを中心としたロシアの消費ブームは衰えを見せていない。失業率は04年の8%台から6%台に下がり、実質可処分所得は今年も2桁の伸びとなる見込み。RTS株式指数は、10月には史上最高値の1,045ptを記録し1998年の金融危機時最安値の27倍となった。原油高はロシアの輸出高を伸ばし、05年上半期は前年同期比39.2%増、金外貨準備高は10月末に約1,650億ドルに到達、政府の安定化基金はパリクラブの部分的期限前弁済を行いつつ、残高は300億ドルを超える高水準となっている。

06年も鉱工業生産の逓減傾向は続きそうだが、原油高による政府歳入および歳出の伸張と個人消費の堅調さによりGDP成長率は5%台を見込む。ロシア政府は石油セクターの生産増加政策と産業構造の改革を進める方針で、06年のWTO加盟をにらみ、ロシア経済のグローバル化の進展が期待される。

プーチン大統領の強硬姿勢が続くロシアと2006年3月の議会選挙が注目されるウクライナ

好調な経済を背景に「大国ロシアの復活」を果たしつつあるプーチン政権は、ウズベキスタン暴動制圧事件で欧米の批判を浴びたカリモフ政権を支持。同国からの米軍撤退とロシア軍駐留を促す一方、中国との共同軍事演習を行うなど、民主化ドミノに怯える中央アジア諸国の求心力を高めるとともに、米国を牽制する動きが目立った。この傾向は06年6月にロシアがG8首脳会議を議長国として開催することもあり、さらに高まるであろう。また、5年ぶりに訪日したプーチン大統領は「四島の主権はロシアにある」という強硬姿勢を崩さなかった。

内政面においては、プーチン大統領が本格的に08年大統領選以降の体制の布石を打ち始めた観がある。現憲法上大統領三選は許されず、自らも出馬せずと表明しているが、実質的な権力掌握の道を模索しているようだ。11月に発表した、メドベージェフ大統領府長官を第一副首相、イワノフ国防相を副首相兼任とする人事は、後継者選びの第一歩として内外の注目を集めた。

ウクライナ・オレンジ革命により成立したユシチェンコ政権は早くも9月に最初の政変を迎えた。チモシェンコ首相とその政敵の対立から、ユシチェンコ大統領は両者を解任し、政敵ヤヌコビッチ元首相と妥協を余儀なくされ、エハヌーロフ首相による新政権を発足させた。しかし、同国は06年に大統領権限を大幅に縮小、首相権限を強化する新体制への移行を控えており、同3月の議会選挙により同国の政治地図がいかに変わるのか注目される。

ユーコス事件とエネルギー・セクター再編がもたらしたもの

2005年、クレムリン内の覇権争いが絡んだロシア・エネルギー界の巨大再編劇が繰り広げられた。ユーコス事件以前、ホドルコフスキー・ユーコス社長はロシア最大の資産家で、民間主導の石油業界の再編を図り、2008年の大統領選挙への出馬をも目論んでいた。しかし、過去2年で業界の風景は一変した。ユーコスは解体され、ホドルコフスキーは禁固8年の実刑が確定し、シベリアの刑務所に収監された。いまや同業界は、ロシア政府の国家統制に服し、従来の核兵器に替わる外交戦略の重要な武器として機能している。06年にロシアで開催されるG8サミットのテーマが、「エネルギー」とされているのも意味深い。