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レポート

2006年の世界政治・経済

国際情報部
2005年12月27日掲載

III. 各地域政治・経済の現状と課題
6.南西アジア
消費拡大と輸出伸長により堅調なインド経済

インドの2005年4–6月期のGDP成長率は前年同期比8.1%となり、政府はこれを踏まえて、05年度(05年4月–06年3月)通期の見通しである7〜8%の達成も可能との楽観的な見通しを示している。国内経済は、鉱工業生産が05年度上半期で同7%増と好調が続き、民間消費も、自動車販売や携帯電話新規契約の伸びが著しい。GDPの約2割を占める農業部門も小麦、大豆等の生産が例年を若干上回る見込みで国内経済全体の安定性が向上している。

原油高や旺盛な内需を反映して、05年4–6月期の経常収支は62億ドルの赤字に転落したが、対内証券投資やITサービスを中核とする資金の流入は順調で、外貨準備高は05年10月末時点で1,437億ドルまで増大している。このため、国内経済や外貨繰りには原油高のマイナス影響はここまでのところ、表面化していない。

今後は、タイとのFTA締結などによる対アジア貿易の増大や、日・韓との租税条約改正による税率低下によって両国向けITサービス輸出の拡大も見込まれ、世界経済へのインドの組み込みがより一層進展するものと考えられる。そうしたなか、06年のインド経済は、ほぼ現状並みの7%前後の成長ペースを維持していくものと考えられる。ただし、原油高が中長期的に継続する場合は、原油の純輸入国であるインドは、原油高を起因とする物価上昇や国際収支の悪化などにより国内経済の減速につながる懸念もある。

高まるインドの存在感

05年6月、インドは中国とロシアが米国を意識して結成した上海協力機構にイラン、パキスタンとともにオブザーバーとして参加した。インド、中国、ロシアの非公式外相会談も開催された。これらは、インドを引き込むことで米国を牽制したいというロシアと中国の意向を認識した上での対応と考えられる。また、国際原子力機関(IAEA)において米国が主張するイラン核問題の国連安保理付託に対しても、イランからの天然ガス輸入のためのパキスタン経由のガスパイプライン計画を進めていることもあって、中国、ロシアとともに反対の姿勢を取ってきていた。

その一方で、7月のシン首相の訪米時には、ブッシュ米大統領から、インドが核不拡散条約(NPT)に非加盟であるにもかかわらず、原子力発電技術を供与するとの発言を引き出した。これはイランの核開発問題に関してインドの協力を得たい米国の思惑を反映してのことと考えられるが、エネルギー輸入国のインドにとっては、電力インフラ整備に弾みをつけたいとの期待がある。05年9月のIAEAの採択では、賛成にまわっている。

こうした動きに見られるとおり、インドは利害が錯綜する大国間にあって、外交戦略上のフリーハンドを得てきている。それに伴って、多くの国がインドを外交戦略上の重要な選択肢と位置付けてきており、国際政治の場におけるインドのプレゼンスは一段と高まってきつつある。

改善が続くインド・パキスタン関係

2005年9月、ニューヨークでシン・インド首相はムシャラフ・パキスタン大統領と会談した。両首脳は、カシミールを含むすべての二国間問題の平和解決やテロの否定を再確認した。続く10月にはシン外相がパキスタンを訪問、ミサイル実験事前通告協定を締結し、カシミール問題の包括的折衝も継続されている(下図)。インドの首都デリーでイスラム教徒が容疑者とみられるテロ事件が発生したため、両国の関係改善は後退も予想されたが、10月に発生した、死亡者約8.7万人、被災者約300万人とされるパキスタン北部地震に際しては、インドはいち早く支援を表明した。11月にはカシミールの両国国境再開に合意している。それに伴って両国間の国境の一部が再開され、経済的な交流のより一層の増加が期待され、スローペースながらも両国関係改善の流れは止まっていない。

カシミール地方をめぐるインド・パキスタン状勢地図