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レポート

2006年の世界政治・経済

国際情報部
2005年12月27日掲載

III. 各地域政治・経済の現状と課題
1.米国
巡航速度の成長ペースで安定的に推移した2005年

2005年の米国経済は、国内自動車メーカーの経営不振の深刻化や大手航空会社の破綻、大型ハリケーンの被害と、局所的あるいは一時的な不調はあったものの、経済全体としては、3%台後半とみられる巡航速度の成長ペースを維持し、総じて安定的に推移した。雇用も月ごとの振れを別にすれば、順調に増加してきている(下図)。

非農業雇用者増加数と実質成長率の推移

また、物価の動向を見ても、原油価格の高騰によりエネルギー関連を中心に上昇率は高まったが、エネルギーと食品を除いた基礎的な物価上昇率(コア・インフレ率)は低水準を維持しており(下図)、少なくとも05年の段階では、全般的なインフレの加速は回避されているものと考えられる。

消費者物価上昇率の推移

そうしたなか、金融政策においては、04年6月以降続けられている政策金利(FFレート)の緩やかな引き上げが継続された。利上げ局面に入ってからの利上げ幅は累計で3.25%に達し、05年12月現在のFFレートの誘導目標は4.25%と、ITバブルの崩壊から同時多発テロ、イラク戦争と逆風が相次いだ「非常時」の態勢を脱却し、ほぼ「平時」の水準に復帰した(下図)。

政策金利(FFレート)の推移
懸念材料として残された長期金利

米国経済の安定は、90年代後半の好況局面で職を得たような低所得層の消費需要が旺盛であったことや、停滞局面に入ってからの財政・金融政策がうまく機能したこともあるが、長期金利が低水準で推移したことの寄与も大きかったものと考えられる(下図)。

長期金利の推移

05年初頭には、財政収支と経常収支の、いわゆる「双子の赤字」の累増を背景に、長期金利の高騰、ドルの暴落といったリスク・シナリオも取りざたされていたが、結果的には、長期金利は安定、為替はむしろドル高基調で推移する形となった。加えて、金利の安定を背景に住宅価格の上昇が加速し、それが住宅保有者の消費活動を活発化させ、景気を押し上げるという、バブル経済的な状況をも生じさせている。

米国の長期金利が安定している背景としては、景気の回復を受けて税収が増加し財政赤字の増加に一応の歯止めがかかったこと、経常収支の赤字は引き続き拡大したものの国外からの資金流入が順調であったこと、といった要因が挙げられる。

とはいえ、堅調な景気拡大、依然として高水準にある双子の赤字という基礎的な状況に大きな変化はない。社会保障改革を眼目とする抜本的な財政再建策は暗礁に乗り上げているし、日・欧の景気が回復に向かえば、米国に流入していた投資資金の動きにも変化が生じる可能性は大きい。その意味で、05年には実現しなかった長期金利の上昇、ドル暴落、加えて住宅価格の下落といった懸念材料は、マグマを蓄えたままの状態で、引き続き06年にも引き継がれていると言えるだろう。

2006年はソフトランディングの第二幕へ

06年の米国経済は、長期金利をはじめ、05年に残された懸念材料を「こなし」、中長期的に安定した成長過程への復帰を模索するプロセスに入るものと考えられる。それは、安定的な成長ペースの回復と金融政策の「平時」の態勢への復帰に続く、ソフトランディングの第二幕と位置付けられる。具体的には、日・欧の景気回復と金融政策の転換のペースに合わせた緩やかな長期金利の上昇とドル安の進行、それに伴う経常収支の赤字の縮小と住宅価格の安定化といった流れが想定される。

近年の米国経済の安定ぶりと、日・欧の回復力には限界があることを考えると、そうしたソフトランディングのシナリオが最も有力と考えられる。ただ、市場参加者の動き次第では、長期金利や為替レート、住宅価格が、急速な水準訂正の圧力にさらされる恐れもある。それを避けるには、慎重かつ機動的な財政・金融政策が求められるが、06年には、年初にFRB議長の交代、秋には中間選挙と、経済政策を左右しかねないイベントが控えている。そうした不確定要素も含め、米国経済の動向に関しては、引き続き注意深く見ていくことが必要だ。