情報発信

HOME > 情報発信 > レポート > 2006年の世界政治・経済

レポート

2006年の世界政治・経済

国際情報部
2005年12月27日掲載

II.2006年の注目点
6.「東アジア共同体」実現に向けた動き
東アジア経済連携の行方

東アジア諸国はASEAN+3(日中韓)を軸として、FTA(自由貿易協定)の締結による経済連携を進めている。2005年はその勢いが一層加速し、日本もシンガポール、メキシコに続き、フィリピン、マレーシア、タイとのEPA(経済連携協定)の基本合意に至った。また、日中韓はそれぞれ個別にASEAN全体とのFTA交渉を進めており、歴史認識等の問題から日中韓によるFTAは実現の見通しは立たないものの、ASEANを介しての事実上のASEAN+3の枠組みでの統合が進もうとしている。インドも同様にASEANとの交渉を進めていることから、インドまで含め、東アジアでの経済連携が作られつつある。

こうした現状を背景とし、「東アジア共同体」の実現を目指す動きが見られ始めた。05年12月、クアラルンプールにおいて、第1回の東アジアサミットが開催されたのはその表れである。ただし、歴史認識、経済格差、文化的な相違など、共同体実現へ向けてはクリアしなければならない課題は多い。

さて、東アジア共同体の実現に向けての一つの基準となるのは2020年であろう。2015年にはAFTAの導入が全加盟国で終了、域内関税はゼロとなり、2020年にはモノ、サービス、投資、資本の移動を含め自由化されたAEC(ASEAN経済共同体)の誕生が予定されている。また、ASEANを軸に東アジア諸国との個別のFTA(中国は2015年、インドが2016年、日本と豪・ニュージーランドが2017年、韓国は2009年まで80%の品目で関税撤廃、その後拡大)の締結が予定されている。AECにASEAN各国とのFTAの網が重なることで、事実上の東アジア経済共同体が誕生すると考えることもできる。

事実上の経済統合は進む

一方で、東アジアでは経済面での統合は既にかなり進展している。生産拠点の集中と分散の結果、東アジアでは垂直的な国際生産分業・流通ネットワークが構築され、既に東アジアの域内貿易は貿易総額の5割を超え、EUに迫る勢いである。EUは先進国同士の水平的差別化による水平的な産業内貿易が行われているのに対し、東アジアは機械産業を中心に、加工度の異なる部品・中間財が双方向に貿易されることによる垂直的な産業内貿易が進んでいることにその特徴がある(下図)。

世界各地域経済共同体等の域内・対外貿易

ところで、東アジア諸国の所得水準と発展段階には大きな乖離が残っている(下図)。こうした違いは賃金水準やその他の立地の優位性の違いを生むため、多国籍企業によって先導されるネットワークはこの違いによって阻害されるのではなく、むしろそれを積極的に利用する形で発達していると言える。日本を核とした雁行型経済システムから、東アジア全体を巻き込んだネットワーク型経済システムへと変化している。

東アジア諸国の一人当たり国民所得

2020年には東アジア経済は一層、域内での分業ネットワークが加速し、域内貿易比率は今以上に拡大、中国やインドが消費地として成長することで、域内で生産したものは域内で消費するという構造へと進化しよう。

06年は日本にとってはインドネシア、および懸案となっている韓国とのEPA、さらにASEANとの交渉の進展がカギとなろう。