情報発信

HOME > 情報発信 > レポート > 2006年の世界政治・経済

レポート

2006年の世界政治・経済

国際情報部
2005年12月27日掲載

II.2006年の注目点
5.米国の対中姿勢
2005年の米中関係

2005年は米中関係の2つの重要な要素が顕在化した年と言える。1つは米中貿易摩擦である(下図)。中国から米国への繊維製品の輸入の急増は議会の反発を呼び、国内市場を保護するために、人民元の切り上げを行わない場合には、中国からの輸入品に27.5%の制裁関税をかけるというシューマー・グラハム法などが議会で可決された。

米国の国別貿易赤字

繊維摩擦は、05年11月に、米中が34品目を3年間の数量制限の対象とすることでひとまず合意を見た。また7月には、これまで固定相場制をとってきた中国の人民元を2.1%切り上げ、通貨バスケット制を導入して、切り上げ圧力を避けた。

もう1つの要素は、中国が米国の覇権挑戦国になるのではないかという中長期的な安全保障上の懸念だ。05年7月、米国防総省は、中国軍事力に関する年次レポートを議会に提出し、長期的には中国の軍事力は、周辺国への脅威となると報告した。さらに中国海洋石油による石油大手のユノカル社の買収をめぐっては、米国の安保ナショナリズムが刺激され、8月、議会の立法により買収は実質的に阻止された。

米国内における4つの異なる対中姿勢

米国内には、中国に対して異なる認識を持つ4つのグループが存在し、それらの相互関係が政策に影響を与えている(下図)。

米国の対中姿勢

「対中安保封じ込め派(グループA)」は、中国を将来の米国覇権への挑戦者としてとらえ、封じ込めを指向するタカ派だ。チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官などで、国防総省のシビリアン(背広組)に多い。

「対中関与派(グループB)」は決して親中派ではないが、中国との対決は不可避ではなく、むしろ中国に関与していくことで、米国の国益と激突しないように誘導できると考えている現実派で、国務省を中心に政府内や専門家内では多数派だ。

「対中経済推進派(グループC)」は、中国との経済関係で大きな利益を得ている産業界が主体で、共和党を資金的に支えているグループも多く、政権や議会への影響力は強い。ウォールストリートの金融界や米国電子工業会(EIA)などで、全米製造業者協会(NAM)は傘下企業の業態の利害に幅があるため中国に厳しい面も示すが、全体としては対中経済推進の姿勢を取っている。

「経済リベラル・人権派(グループD)」は、中国との貿易で被害を受けている繊維業界や中国の安い労働力に職を奪われる事態を懸念する中小企業、労働組合とそれらの意見を代表する議員である。彼らは中国の競争力、知財権の侵害、模造、為替操作を懸念している。同時に政治的には中国の人権侵害を批判するリベラル派も多く、議会民主党に多い。

米中摩擦の主役は、国内政策では対立することも多い、保守の対中封じ込め派(A)と経済リベラル・人権派(D)で、対中懸念で議会を中心に連携して対中強硬派を形成している。かたや対中関与派(B)に属する大統領府(ホワイトハウス)は、封じ込め派(A)のタカ派の圧力を受けながらも、対中経済推進派(C)の意見を考慮し、現実的な観点から対中政策を極端に振れさせないよう苦心してきた。国防総省の中国の軍事に関する年次報告書も、議会提出前に大統領府が異例の介入を行い、中国への言葉使いを配慮したために、発表が遅れたと言われている。

2006年の対中政策

06年は、中間選挙を控える米国は、米国民の最大の懸念であるイラク状況への対処を強いられる。ブッシュ政権は、中国との経済的利益やその北朝鮮や中央アジアへの影響力を考え、全面的な対決は回避し、現実的な対中政策を継続していくと目される。このような基本姿勢を象徴するのが、2005年9月のゼーリック国務副長官スピーチで、彼は中国に国際システムにおけるResponsible Stakeholder(責任ある利害関係者)であることを求め、これは中国国内でも好意的に受け止められている。

05年11月に訪中したブッシュ大統領も、人権、知財権、市場開放、人民元の切り上げなどに注文はつけたが、具体的な政策圧力を避け、中国のメンツに配慮した。同月の財務省の議会報告も中国を為替操作国に認定せず、今後の人民元改革の加速を求める穏やかな内容であった。ただし、今後ブッシュ政権のレイムダック化が進み、相対的に議会の力が強まっていくようだと、政権の思惑を超え、議会発の中国への圧力に政府も同調せざるを得なくなるというシナリオも考えておく必要があるだろう。