レポート
2006年の世界政治・経済
国際情報部
2005年12月27日掲載
II.2006年の注目点
4.BRICs台頭の光と影
消費マーケットとしてのBRICsの魅力の高まり
—中間層に加え、Upper-Middle Income層も急増中—
世界経済の牽引役としてBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)への注目が高まっている。IMFによれば、2000〜2006年の世界の実質GDP成長(購買力平価ベース)のうち、実に半分弱がBRICsの寄与となる見込みである。
特に注目されるのが、中間層の台頭を背景に大幅な拡大を続けるその消費マーケットである。BRICsという言葉の生みの親であるゴールドマンサックスによれば、年収3,000ドルを超す、いわゆる中間層は、現在の2億人強から2015年には10億人弱へ増加、米国、EU、そして日本の人口合計を上回るに至る(下図)。こうした中間層の拡大を背景に、BRICsにおいて、白もの家電、AV、そして自動車等の耐久消費財市場が急成長しているが、BRICsを単なるローエンドの消費財マーケットと見くびってはいけない。

先進国の国民と同程度の購買力を持つ、年収1万ドル以上の、いわゆる‘Upper-Middle Income’層は、現在1,440万人にすぎないが、2015年には1億2,000万人弱と日本の人口と同規模に、2020年には2億5,000万人強と日本の人口の約2倍へ増加すると予想されている(下図)。日本人以上にブランド物への執着が強いとされる中国人の奢侈品需要は、こうしたUpper-Middle Income 層の増加を背景に2015年には日本に並ぶとの予測もある。

中国のみならず、BRICsにおいてUpper-Middle Income層の増加による、衣・食・住における高度化は急速に進んでおり、企業にとって「モノ」から「サービス」までそうした消費マーケットの変化にいかに対応するかが今後のカギである。日本企業は、中国において、Upper-Middle Income層向けに、高級アパレルブランドや日本式ブライダルの展開、コンビニへの日本式物流機能の提供、住宅開発等、既に積極的な攻めを行っている。さらに多面的展開を進めるとともに、既にそれなりの厚みを持つ、ロシア、そしてブラジルのUpper-Middle Income層の消費需要取り込みへいかに先行布石を打てるかが今後の課題である。
深刻化する影の部分—環境破壊、資源制約—
こうした、BRICs台頭の光の部分に注目が集まる一方で、その影の部分も急速に拡大している。BRICsは、先進国と比べると、(1)石炭、石油等の化石燃料への依存度が高いこと、(2)産業構造は、農業、製造業のシェアが高くサービス化が遅れていること、(3)エネルギー効率の悪い旧式の機械設備が多いこと、(4)これからモータリゼーションが本格化すること等から先進国に比べ著しくエネルギー利用効率が劣っており、現在の経済構造を維持したままでの高成長は世界に資源制約や深刻な環境汚染をもたらす恐れがある。
BRICsの一次エネルギー消費/GDP原単位(1ドルの名目GDPを生み出すのに必要な一次エネルギーの消費量)は、日本を100とすると、一番エネルギー効率の良いブラジルでも282、インドが497、中国が763、最も効率が悪いロシアは1,043である(つまり1ドルのGDPを生み出すのに日本の10倍の一次エネルギーを必要とする)(下図)。

米国エネルギー省の予測によれば、こうした構造を反映し、BRICsの石油消費量は、2000〜20年の間に年平均3.4%と、世界全体の同1.9%を大幅に上回るペースで拡大を続け、寄与率は33.1%に達する(下表)。CO2排出量の増加も顕著で、2000〜20年の間に年平均3.7%と世界全体の同2.2%を上回り、寄与率は実に48.3%に達すると予想される。

2005年2月に、2008〜12年の間にCO2やメタン等の温室効果ガスの年平均排出量を90年比で削減することを義務付けた京都議定書が発効したが、エネルギーを「爆食」し、大量のCO2を排出し続けるBRICsはロシアを除けば削減義務がなく、米国の不参加と相まってその効果は限定的なものにとどまるとみられている。2013年以降のポスト議定書の枠組みの中にBRICsをどう取り込んでいけるかは、地球温暖化防止に実効性を持たせるカギとなろう。
かつての公害大国から環境先進国へ脱皮を遂げた日本にとって、省エネルギー、新エネルギー、環境技術からCDM、排出権取引等の分野は最も得意とする分野であり、消費マーケットとあわせ日本企業の積極的取り組みが期待される。

