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レポート

2006年の世界政治・経済

国際情報部
2005年12月27日掲載

II.2006年の注目点
1.原油価格の行方と世界経済への影響
‘Oil Price Proof Economy’

原油価格の高止まりが続いている。WTI(期近)は、8月30日に一時70.85ドル/bblと史上最高値を更新後、若干弱含んではいるが、12月12日現在61.30ドルと前年同期比20ドル弱高い水準にある(下図)。

原油価格(WTI)の推移

原油価格は、2001年12月の20ドル/bbl弱を直近の底とした中期的上昇局面にあり、現時点でほぼ3倍の価格上昇となっているが、過去のオイルショック時に見られたような世界経済の顕著な減速はいまのところ見られない。

その背景には、過去のオイルショック時と比べると、(1)供給途絶が原因ではなかったため、原油価格の上昇ペースが比較的緩やかだったこと、(2)名目価格は史上最高値を更新したが、実質価格ベースで見れば低い水準だったこと、(3)先進国では省エネ化が進展したこと、(4)インフレ期待およびインフレ率が安定し、中央銀行が低金利政策を維持できたこと、(5)オイルダラーが先進国の金融市場、特に債券市場にスムーズに還流し、長期金利の低位安定に貢献したこと、等がある。

原油価格上昇の影響を抑制してきた環境は変化しつつある

しかしここにきて、そうした環境が変化しつつあることに注意が必要である。まず第一に、原油価格は、05年に入って上昇ペースが加速したことにより実質価格ベースで第一次オイルショック時を抜いた(下図)。第二次オイルショック時よりはまだ低いが(05年価格で80ドル台半ば)、何らかの供給ショックが発生すれば実質最高値は十分射程圏内にある。

米国の原油入着価格

第二に、先進国は原油価格上昇への抵抗力を示しているが、タイ、インドネシア等エネルギー効率の悪いアジアの発展途上国等で(下図)、財政赤字・経常赤字の悪化やインフレ率の上昇等、原油価格上昇の悪影響が顕在化し始めている。また、先進国でも米国が堅調な経済成長を背景に完全雇用に近づき、労働コストがじり高となるなど、物価をめぐる環境は悪化しつつある。

各国の石油消費/GDP原単位
原油価格上昇への抵抗力は低下しつつあり、一層の価格上昇へ注意が必要

秋口までの原油価格上昇加速時に指摘された、(1)堅調な世界経済の拡大を背景とした需要増、(2)開発投資の伸び悩み、米国の精製能力不足(含ハリケーンカトリーナの影響)(下表)、(3)OPECの限定的生産余力、等、原油需給のファンダメンタルズに大きな変化はない。現在、投機資金の流出等の価格下押し要因にもかかわらず、60ドル強の価格水準が維持されており、原油需給の引き締まりを示す。

メキシコ湾岸地域の石油・天然ガス生産

06年の原油価格は高止まりを続け、WTI(期近)は06年末で60ドルを若干下回る水準が維持される、というのがコンセンサス的見方である。北半球で寒波の襲来、投機資金の戻り等があれば再び80ドル/bblの史上最高値更新を目指す可能性もある。

日本経済がエネルギー効率の上昇や円高を背景に、過去に比べ原油高への抵抗力を大幅に強めていることは事実だが、もう一段の原油価格上昇は、(1)長期金利の大幅な上昇による米国の住宅価格の下落、(2)発展途上国経済の失速という形で、外需の悪化を通じて日本経済の大幅な減速につながる恐れがある。06年の世界経済の最大のリスク要因として原油価格動向から目が離せない。

価格体系の変化による経済構造変化への注目

中・長期的な視点から見ると、原油価格の大幅上昇により引き起こされる需給両面での経済構造変化への注目が必要である。過去のオイルショック時には、省エネ投資の活発化、大型乗用車から燃費の良い小型乗用車への需要シフト、石油代替エネルギー開発の加速化、原発推進等の変化が生じた。

今回も、既に米国では燃費の悪いビッグ3系のSUVから、燃費のいい日本メーカーの小型車への売れ行きシフト、ハイブリッド車の売れ行き加速等、需要面の変化が進んでいることに加え、「包括エネルギー法」の成立(ガソリン添加用エタノールの使用推進、原発建設の推進等によりエネルギー自給率の向上を目指す)等、政策面の対応も進みつつある。企業にとって、こうした構造変化に包括的に対応する「総合エネルギー戦略」構築の必要性が高まっている。