レポート
2006年の世界政治・経済
国際情報部
2005年12月27日掲載
I.世界政治・経済展望
1.世界経済—持続可能な成長モデルへの転換に踏み出す—
荒波を越え堅調な拡大を続ける世界経済
2005年の世界経済は、堅調な拡大を続け、前年比3.1%と過去10年の平均(3.0%)を上回る成長率を達成した。原油価格の上昇、IT・デジタル家電の在庫調整等の影響が懸念されたが、米国、および中国等アジアを中心とするエマージング諸国を軸に予想を上回る耐久力が示された。
米国は、雇用・所得の増加、移民効果を背景とした個人消費、住宅投資の拡大に加え、企業収益の増加を背景に設備投資が好調で、秋口の大型ハリケーンの悪影響は軽微にとどまった。エマージング諸国は、インフラ需要の高い伸び、中間所得層の増加による衣・食・住全般にわたる個人消費の拡大を背景に高成長を続けた。日本も、失われた10年を経て3つの過剰(債務、設備、雇用)の克服により企業体質が強化され、設備投資主導で底堅い回復、低迷が続いていたEUでも、年後半以降輸出主導で回復の兆しが見え始めた。
2006年は全員参加型の「同時拡大」を予想
06年の世界経済は、米国、エマージング諸国の拡大持続に、日本の自律的景気回復への移行、そしてEUの景気持ち直しが加わり、全員参加型の拡大局面を迎え、実質GDP成長率は前年比3.1%が予想される。
米国は金融引き締め効果の浸透で住宅投資がピークアウトするが、個人消費、設備投資の増加にハリケーンの復興需要が加わり巡航速度で拡大を続けるだろう。エマージング諸国は、国際商品市況の高止まりによるインフレ圧力が懸念材料だが、IT・デジタル家電需要の回復等を背景にアジアを中心に高成長を続けると予想される。日本は、企業収益の回復が所得の増加から個人消費の拡大へつながり、内需主導の自律的回復局面へ移行が進むだろう。EUも輸出の拡大や企業収益の増加による設備投資の拡大を背景に緩やかな回復が予想される。
実質世界貿易は、05、06年とも前年比7〜8%の堅調な拡大が予想され(名目ベースでは05年に10兆ドル、1995年の5兆ドルから10年で倍増)、原油、鉄鋼原料、非鉄金属等の国際商品市況は高止まりが続くだろう。
4つのリスク要因
リスク要因は、(1)寒波、供給ショック等による原油価格の急騰、(2)インフレ期待を背景とした長期金利の大幅な上昇による米国の住宅価格の調整、(3)拡大を続ける米国の経常収支インバランスを背景としたドルの大幅下落、(4)鳥インフルエンザ(人同士で感染する新型ウイルス)の感染拡大、である。
特に急浮上してきたのが新型ウイルス発生の可能性が指摘される鳥インフルエンザである。現在の被害の中心はアジアだが、グローバル化が進む下では瞬く間に世界中に蔓延する可能性が高い。アジア開銀の試算によると、悪影響が4四半期続く「悲観シナリオ」ではアジア(除日本)の名目GDPは年間7%ポイント弱押し下げられ、世界経済もリセッション入りする。アジアにとって、SARSを上回り1997年のアジア危機以来の最大の危機である。
持続可能な成長構造への第一歩
2000年のITバブル崩壊、01年の9.11を背景に、デフレを恐れた主要先進国は、長期にわたる歴史的低金利政策、減税等の景気刺激策で景気を支え、一方中国は、成長至上主義の下、資源多消費型で2桁近い成長を続けた。
しかし、2000年代半ばに至り、米国の経常収支赤字の累増によるドルの不安定性、中国の環境破壊、貧富の差の拡大等、そうした政策の負の側面が世界的に顕著化している。06年は世界経済が中・長期的に持続可能な成長構造へ向けて転換への第一歩を踏み出す年として位置付けられよう。
米国は、04年央来の金融引き締めの最終局面に入り(FFレートは05年初2.25%→12月中旬現在4.25%)、貯蓄率は今後緩やかに上昇、ハリケーン対策等の一時的歳出増要因は剥落に向かい、景気拡大による歳入増も見込まれることから財政赤字の増加にも歯止めがかかるだろう。
日本は、これまでバブル崩壊の後遺症からいかに抜け出すかという後ろ向きの改革に官民とも終始してきたが、05年からの人口減少、07年の団塊世代の退職開始等、人口動態が激変するなかで、政府は社会保障制度改革、企業は国内での最終需要の質的変化への対応やネットワーク型発展を続けるアジアのダイナミズムの取り込み等、安定成長基盤確立へ向けて対応を加速する必要がある。
EUでは、リストラや労使合意による高賃金の是正等企業の構造改革が進んでいるのに対し政府の改革が遅れていたが、中心国のドイツでは、CDU/CSUとSPDによる大連立政権が誕生、財政赤字削減、労働市場改革へ踏み出す見込みである。
中国は、06年からの第11次5カ年計画において、これまでの「爆食型成長」から、成長の質重視と効率性の上昇、都市と農村の均衡の取れた発展等、「調和のとれた持続可能な成長」へと大きく舵を切ろうとしている。
企業は世界経済のパラダイム転換に対し、どこに成長の可能性を求めていくのか、先見性と実行力が問われている。

